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ー記憶ー3

 その雄介からのメールに望はため息をつく。  もしかしたら、「仕方ないだろ。俺たちは忙しい仕事をしているんだから……」とでも思っているのかもしれない。 「ホント、暇がある時にな。 だってさ、お前と非番が合う日が少ないからさ。 そりゃ、俺だってたまにはお前と会いたいと思ってるんだからよ」  望は雄介にメールした後に再び大きなため息を吐くのだ。  久しぶりの恋人からのメールで嬉しいはずなのに、それと同時に寂しさが込み上げてきてしまったということなのかもしれない。  今まで連絡がなくて既に半分以上恋人の存在を忘れていたはずなのに、逆に恋人からメールが来てしまったことで再び忘れかけていた恋人のことを思い出してしまったということだろう。 だからなのか余計に恋人に会いたいという気持ちが大きくなってしまったのかもしれない。  恋人からのメールに再び望はため息をついていると、 「今日、今から空いてへんか? 明日は休みやから、食事でもどうかな? って思うたんやけど?」 「……へ?」  そのメールの内容に望は思わず声を上げてしまった。 今までため息をついてしまっていたのが嘘のように、その恋人からのメールに目の前がクリアになったような気がしているようだ。 現に望は目を見開いてしまっているのだから。  そりゃ、好きな相手からのお誘いメールなのだから、嬉しさで声が出てしまうのは当たり前のことだ。 例え明日、自分が休みじゃなくても恋人からのお誘いに断るわけがない。 「ああ、俺も休みだし、構わないぜ」  いつも仕事を終えた後は流石に疲れたような表情をしていたのだが、今日の望は違うようだ。 恋人からのお誘いメールに今までの疲れが吹っ飛んだように思える。  そんな望の様子に和也は部屋の掃除をしながら、 「なーんだ……その緩みっぱなしの顔はさ。 まさか、恋人からのお誘いメールが来たとか?」  和也はそうニヤニヤとした表情をしながら望のお腹を肘で突くのだ。 「え? あ、うるせぇな……」  和也が言った言葉が図星だったのだったようで、望の表情からはにやけたような表情がおさまるような気配はなかった。  確かに恋人からのメールというのは嬉しくて仕方がない。  だが流石の望も和也にはそんな自分を見せたくなかったのだが、でもどうしてもにやけた顔は抑えられなかったようだ。 そうそうガッツリとその嬉しさが表情に出てしまっていたのだから。 そう何故だか望は和也に対して誤魔化したい気持ちがあるようで、 「ほらほら、さっさと仕事を終わらせて帰るぞ!」

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