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ー記憶ー13

「そりゃ、分かるけどさ、俺はさっきシャワーって言った筈だぜ」 「スマン……先に望に言うておけば良かったんやけど、俺な、風呂だけは浸からないと入った気がせんへんのやって。 そうそう、風呂に浸からんと疲れが取れたって気もせぇへんしな。 ま、そういう事やから、とりあえず、それが、俺流のお風呂の入り方なんやで……」  雄介は言いながら浴槽から上がってきた。  そして、雄介は今望と会話していて、ある事を思い出してしまったようだ。 今までお風呂場で寝ていたから半分忘れていた事だったのだが、頭が冴えてくるにつれ思い出してしまったのであろう。  そう、望にお風呂に入る前に自分はお風呂に入った時にシャワーではなく浸からないと入った気がしないという事を伝えられなかった理由をだ。  さっき雄介はお風呂に入る前に望を後ろから抱きしめたのだが、それを断られてしまった。 だからそれでヘコんでしまった雄介は望には何も伝えずにお風呂場へと向かってしまったのだから望にその事を伝えるのを忘れていたという事だ。  雄介の方は先程の事を思い出してしまったのか、その事について悩んでいると、望の方はもう何も考えていないのか、それとも雄介にそんな事を言った事を忘れてしまっているのか、明るい声で、 「じゃあ、早く着替えて来いよな」  笑顔で言う望。 望はそれだけを雄介に伝えると脱衣所から出ようとした瞬間だっただろうか、背後にいた雄介に、 「ホンマは俺の事、心配してないんと違うか?」  雄介はそう小さな声で言ったつもりだったのだが、どうやら望の耳にはっきりと聴こえてしまっていたようだ。 望はその雄介の言葉と共に、脱衣所にあるドアを部屋内に響かせるような音を立て、閉め脱衣所を後にしてしまう。  そんな事があったからだろうか、雄介が着替えて出て来てからも食事の時にはもう二人の間に会話は無くなってしまっていた。

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