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ー記憶ー14

 今、二人の間には会話もなく、ただただ黙々と食事をしていて、今はもうテレビの音しか聞こえてこない状態になってしまっている。  今日は久しぶりの再会で、会話も弾むだろうと期待していたはずだった。  だが、それとは逆に今はただただ静かな空間だけが漂ってしまっていた。  さっき、望が雄介に抱きしめることを拒まなかったら? あのまま二人の間には会話があって楽しんでいたのであろうか。  そのたった一瞬、放ってしまった言葉で人間というのは誤解を生んでしまうことがある。 例えそれが無意識であってもだ。 しかも、まだ恋人同士になったばかりで相手のことをちゃんと理解してなかったから、余計に勘違いが起きてしまったということだろう。  その後も二人の間には会話がなく、望はとりあえず雄介のことを客間へと案内すると、望はお風呂に入ってから自分の部屋で横になるのだ。  次の朝。  望は起きて階下へと向かうと、机の上には手紙が置いてあった。  望はその手紙を手にしながらソファへと腰を下ろす。 『今日はもうスマンな。 ちょっと急な用事が入ったし、早めに帰らせてもらうわぁ。 雄介』  とそこにはそう書かれていた。  望はそれを読むと、ぐしゃぐしゃと丸め、近くにあるゴミ箱の方へと投げるのだが、その紙はゴミ箱から外れ床へと落ちてしまう。  望自身も雄介が帰ってしまったということでやる気も何もなくなってしまったのか、その床に落ちてしまった手紙さえも拾わず、リビングテーブルに頭を俯けたまま大きなため息を漏らすのだ。

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