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ー記憶ー17

 窓を全開にしたことで爽やかな風が部屋の中に入り、雄介の髪を揺らす。  そして、雄介は今までの疲れがあったのか、いつの間にか夢の中に引き込まれていたようだ。  そのまま爆睡してしまった雄介が目を覚ました頃には、先程洗濯をした頃とは異なり、真上にあった太陽がオレンジ色になって窓から部屋に射し込む時間帯だった。 「ぁ……え? おっ! 寝過ごした!?」  雄介は慌てて飛び起きてテレビを付けるが、朝のニュース番組ではなく夕方のニュース番組で、胸をホッと撫で下ろす。  人間なのだからたまにあることだ。 大人になると昼寝はあまりしない人が多いだろう。 だが稀に昼寝をして朝だと勘違いすることもある。 今、雄介はその状態だったということだ。  雄介は体を起こすと午前中に干しておいた洗濯物に触れる。 やはり洗濯物は乾いていて、それを部屋に取り込むと雄介は一つ大きな溜め息を漏らす。 「ホンマ、今日はこないなハズやなかったんやけどなぁ?」  そうぼそっと雄介は独り言を漏らし、窓を閉めて夕飯の支度を始める。  料理はこの仕事を始めて東京で一人暮らしするようになってから覚えた。 仕事上、頭よりも体力重視である消防士。 そんなことから食事もバランスの良い物を採らなければならないのだから、覚えたようだ。  そうなれば、コンビニ弁当のような栄養が採れない物に関してはたまにならいいのだが、しょっちゅう食べない方がいいだろうと思い、自分で作るようになっていた。  そして翌日。  望はまたいつものように病院に出勤し、午前の診察を終えると食堂に向かう途中で、和也は望の様子がおかしいことに気付いたようだ。

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