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ー記憶ー69

 暑くなってきたこの季節。 空は青々としている。 桜の時期も終わり、桜の木の花はもうとっくに散ってしまっていて、今では葉っぱが元気に緑の風によって揺らされていた。  そんな心地よい気温の中、二人は雄介の家に向かって歩くのだ。  そして雄介の家に到着すると、 「お前の家ってマンションだったんだな」 「まぁ、中は1Kだけだな。ってか、お前ここに来んの初めてやったっけ?」 「……って誰か呼んだ事あるのか?」 「そりゃ、親友の坂本はしょっちゅう来ておったし」 「ふーん……やっぱ、アイツとは仲が良かったんだな」 「まぁな。 あ! それと梅沢さんやったっけ?」 「梅沢……? 和也!?」  その言葉に望は雄介のことを気持ち睨み上げるように見るのだ。 「あ! 梅沢さんで良かったみたいやんな。 あー、まぁ、そん時は勝手に梅沢さんが俺の家に来たってだけで……」  そう自分で言ってしまったのにも関わらず望からしてみたらいい顔をしてないのだから、雄介は『マズい』とでも思ったのであろうか。 完全に望から視線を逸らして焦ったように答えたのだから。 「……それって、どういう事だよ?」 「へ? え? あ、まぁ……。 それ言っても怒らへん?」  雄介の言葉に少し考えると、 「事情によるかもな」  望のその言葉に雄介はひと息吐くと、その時のことを望に話すのだ。  その話を聞いた望もひと息吐くと、 「ま、そういう事だったんならいいんじゃねぇのか? それで、俺たちは元に戻ったんだしさ」 「せやな」  雄介の方はその話をしてスッキリとしたのか笑顔になると、望の方も笑顔で雄介のことを見上げる。 きっと望の場合には雄介に事実を話してもらえたことに笑顔になれたのかもしれない。  そう言いながら二人は部屋の中へと入るのだった。

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