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ー記憶ー112

「……せやけど」  やっぱり今の望は、以前の彼とは性格が異なるように感じる。  ハッキリ言って、今の望にはどのように接すればいいのか、まったく見当がつかない。  以前の望なら、下に和也がいようがいまいが、望からの誘いには喜んで応じるだろう。 しかし、今は彼の記憶がない。  やはり雄介からすれば、今の望は望であって望ではない。 完全に別人とみなしているようだ。 「ほら……」  雄介は望に手を引かれ、ベッドの上に仰向けにされるが、今の望には抱かれる気はないらしく、体を一切動かさない。  望はその雄介の気持ちを理解しているのか、あるいは無自覚なのか、彼の腹にまたがりながら彼を見つめた。 「な、望……ホンマ、ちょ、アカンって……。 下で和也が待っておるし……」 「さっきからお前そればっかじゃねぇか……今の俺じゃ不満なのか?」  今の望は、雄介の気持ちを理解しているのか、または無自覚なのか、彼を誘っているようにも見える。  その行動に雄介は溜め息しか出てこない。  本当にどうすればいいのか。  今の望に手を出すべきなのか、望の記憶が戻るまで待つべきなのか。 そう悩む雄介。 「なぁ?」  雄介に望は甘い声で誘うように問いかけ、なぜか彼のお腹の上で腰を動かしてくる。  雄介は理性を抑えようとして瞳を閉じたままでいるが、望は彼の反応を気にせず、彼の手首を取って自分のパジャマの中に入れてしまう。

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