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ー記憶ー123

 深紅の頬を持つ望は、怒鳴り声を上げるものの、その半分は本気ではなかった。  そんな望に、雄介は嬉しそうに微笑み、すぐそばにあった蒸しタオルを手に取る。  そして、それを望に差し出した。 「身体を拭いた方がいいんやない? 午後も仕事が待ってるやろ?」 「ああ、まぁな……」  雄介は望の体を軽々と抱え、診察室のベッドまで運んだ。 「お前……」  その一言で、望が何を伝えたいのか、雄介は理解した。 「そりゃな……今まで鍛えてきたしな……お前一人ぐらいなんて軽いさ……」  そう言いながら、雄介は望の唇に自らの唇を重ねる。  やっと、二人の間に戻れたような気がした。  唇が離れると、二人の顔に自然な笑みが浮かぶ。  色々あったけれど、これからも二人は一緒にいられるだろう。  望は自らの体を拭き終えると、真剣な瞳で雄介を見つめた。  それに気付いた雄介は、首を傾げながら首にハテナマークを浮かべてしまった。 「……何?」 「覚えてるか? 前に約束したこと」 「ああ! もちろん! 『一緒に住もう』だろ?」 「ああ……」  やっと、雄介の前できちんと人の目を見て言えたような気がした。  これからはずっと一緒。 だからこそ、キツい仕事でも耐えられるのかもしれない。  今度からは、二人で何もかも楽しもうか。  これからの人生、まだまだ先があるのだから。 『ー記憶ー』END NEXT→『ー天災ー』

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