192 / 1471

ー天災ー13

 扉を開けると、まず雄介の視界に入ってきたのはトイレだ。 多分、部屋を広くするためにトイレとお風呂場が一緒なのだろう。  そこに足を踏み入れると、トイレと浴槽の間にはカーテンが引かれていた。  そのカーテンには「防火カーテン」と書いてある。  普段、このカーテンはきっと浴槽とトイレとを区切るためのものだろうが、火災の場合には火の手が回らないようにするためのものでもある。  そこで雄介は声をかけてみた。 「ここにおるんか?」 「……うん」  微かではあるが、今にも不安で消え入りそうな声に、雄介はそのカーテンを開けてみる。  すると、カーテンの奥にある浴槽の中でしゃがんでいる子供の姿が見えた。  そこで安堵の息をつき、 「良かったわぁ、ここにおって……助けに来たで……」 「うん!」  雄介は優しくその子供に言うと、その子供は消防士の姿を見てやっと安心したのか、雄介に向かい笑顔を向けていた。  そしてその子供は雄介にしがみついてくる。 「暑かったと思うねんけど……よう頑張ったなぁ」 「うん!」  そう笑顔で返事する子供に安堵の表情を浮かべると、とりあえずお風呂場を後にする雄介とその子供。  確かに子供を助けることはできた。 だが実はここからが問題なのだ。  ここからどうやって雄介と子供を助けるか? これが問題である。  もう空気ボンベの方は一分を切っていた。 残り一分でこの子供と一緒に助かることができるのだろうか。

ともだちにシェアしよう!