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ー天災ー16

 未だに炎が上がっているマンションの十階。  階下では沢山の消防士が消化活動にあたっているのにも関わらず、未だに鎮火しそうにもない。  雄介は下にいた親にこのマンションに自分の子供がいると言われて、雄介は勝手な行動で来てしまっていた。  その親の子供さんを見つけたまでは良かったのだが、空気ボンベの方も携帯型消化器の方ももう残りが少なくなってしまっている状態でもある。  人間空気が無ければ生きていく事は出来ない。  勝手に人命活動に来て空気ボンベはいよいよ無くなってしまったという事だ。  子供の方は助ける事が出来たのに、このままではこの子供さえも今は危ない状況となっている。  意識が朦朧としている中、雄介の頭の中に出て来たのは望がこの前言っていた言葉だ。 『死ぬんじゃねぇぞ……』  だが雄介は、子供も自分も助かる前に意識を失ってしまったらしい。 「……い、桜井!」  そう、何処から自分の名前を呼んでいる声が聞こえてくる。 だが、その声はその自分が想っている人の声ではないらしい。  前にテレビで臨死体験したという人の話を聞いた事があるのだが、そういう場合には大抵親か自分が想っている人の声が聴こえてくるんだと思うのだが、それとは違う声だ。 「桜井! 気付いたか?」 「……へ?」  雄介は薄ぼんやりとする意識の中、少しずつなのだが視界が開けて来たようだ。  ここは俗に言われている天国という所なのであろうか?  先程まで雄介はあの火の海の中に居た筈だ。 さっきまでは地獄のような熱さだったのに今は全く熱くはない。 そりゃ暑いと言えば暑いのだが先程の熱さとは比べものにならないほどの暑さだという事だ。  雄介は未だ回らない頭で辺りを見渡す。  その視界に入って来たのは親友の坂本の姿だ。 「……ん? 坂本?」 「良かったー。 気が付いたみたいでな……」 「……ああ、おう」  一応、雄介は坂本の問いに対して答えてみると、ちゃんと答えていたのだから生きているのは間違いない。  しかし今は何処にいるのかさえ自分の中では分かってないようだ。  現実なのか? それとも天国なのか?  意識がハッキリとしていく中で周りの景色を確認し始める。  青い空に眩しい太陽。  天国にもこんな所があるのであろうか?  いや多分ないだろう。  地球にいるからこそ、地上にいるからこそ、その太陽と空が見えているのではないだろうか? 「そっか……」  雄介はやっと今の自分のいる状況を確認する事が出来たのか、やっと動き出した頭の中で太陽に向かって自分の腕を掲げてみるとそこには自分の手があったのだから。

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