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ー天災ー42
現在の状況では、まだ何が起きているのか二人にはよくわかっていない。
しかし、院内アナウンスがあったため、急いでロビーの方へと向かっていく。
その途中、望はふと気になったことがあり、病院の廊下にあるカーテンを開けてみる。
すると、そこには今までの街並みがなく、木造家屋が倒れ、鉄筋でできたマンションにはヒビが入り、一階部分が潰れそうになっていた。 そして階下の建物からは白煙が上がり始めている。 そう、そこには今までとは違う世界が広がっていた。
今の大きな地震で外の世界では大変なことが起きているのだろう。
望は和也とその光景を見ると、何も言わずにロビーに急いだ。
二人は心が通じ合っている。 望のアイコンタクトで、和也は望の意思を理解した。 二人は同時に下へと向かっていた。
地震が起きてから、病院には被害がなかったかもしれないが、外では大きな被害が出ている。
そして、ロビーに向かうと、人々で溢れていた。
既にこの状況なのに、望がロビーに入ってからも次々と患者が運ばれてくる。 しかし、気になるのは救急車ではなく、即席で作った担架で運ばれてくる患者たちだ。
望が働いている病院は緊急病院だ。 救急車が来るはずなのに、その音すら聞こえない。
さっきは廊下から外の景色を見ていたが、外の本当の状況は把握できない。 外では道路が電柱や電線で寸断されているかもしれない。 だから患者を運ぶのは救急隊員ではなく、地震で被害を免れた一般の人々なのだ。 スーツを着た人たちや学生が、人々を連れて来ている。 こんな時こそ、みんなが力を合わせるのだ。
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