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ー天災ー92
そうやって仕事をしていく中で、やっと患者さんのことで落ち着いて来た頃、望は今まで立っていた体を休めるために椅子に腰を下ろす。
「少し落ち着いてきたみたいで良かったな」
「そうだな」
なんて会話をしている間、和也は裕実に台車を片付けるよう指示を出していた。
「あー、本宮君さ、その台車の上にある物とかを棚に戻しておいてくれないか?」
そうして、ここに慣れてもらうために、裕実に任せる和也。 裕実は、
「はーい」
と返事をした直後、診察室に金属音が響き渡った。
その音にびっくりしたのは望と和也だ。
和也は、その音がした方へ向かい、台車と共に倒れている裕実の姿を見つける。 しかし、幸いなことに台車の横に裕実が倒れている状態だった。
「……って、お前なぁ、また、やったのか?」
「す、すいません……手が滑っちゃいまして……」
和也はため息をつきながらも、台車を起こし裕実を立ち上がらせる。 そして、台車に乗っていた物も台車の方へと戻していくのだ。
その間、今の和也達の会話をちゃんと聞いていたのか、望は、
「和也……今の言葉ってどういう意味だ?!」
和也が片付けを手伝っている最中に、望が低い声で問いかける。
その声から察するに、望はどういうわけか怒っているのであろう。
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