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ー天災ー93
和也はその気配に恐る恐る望の方に視線を向ける。 やはり望の表情は怒っているようで、目が座っていた。
和也は裕実に今落とした物を消毒液に付けておくよう指示をすると、望の背中を押して診察室の方へと向かう。
「ちょっと、話聞いてくれないか? アイツはさ……確かにドジなのかもしれないけど、でも、仕事の時にはちゃんとやってるだろ?」
「ああ、まぁ……確かにな……」
望は椅子に座りながら和也のことを見上げる。
「でもな、こう仕事が終わると気が抜けちゃうのか、ああやってドジっちまうみたいなんだよな。 昨日の時点で俺は知ってたんだけどさ、まぁ、だから、望の前ではやるなよ。 とは言っておいたんだけど……。 また、今日もやらかしたって訳だ」
そう和也が話を終えた直後、少し離れた所から、
「わぁー!!」
という声が聞こえてくる。
「え? はい!?」
その声は明らかに裕実の声で、様子を見てみると、何故か転んでいる裕実の姿が目に入ってくる。
「え? ちょ、何で!?」
和也は小さな声でツッコミを入れる。
だが次の瞬間には裕実の側へと向かうと、
「大丈夫か?」
と声を掛ける。
「だ、大丈夫です……気にしないで下さい。 僕っていつもこんな感じですから」
そう言いながら裕実は和也に助けてもらって立ち上がると、同時に和也に向かって笑顔を見せる。 それに対して、和也の表情が急に変わる。
「……へ? あ、ああ……ぅん……」
裕実の笑顔を直視できなくなった和也は、直ぐに視線を外すのだ。
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