「そんな事でイライラしてんじゃねぇよ」と付け加えてやりたかったのだが、今の望にそんな事を言ったら怒られる可能性の方が大だ。　なら無難に辞めておいた方がいいと思ったのか、和也は望にそれを言うのを辞めた。 　望は携帯を机の上に置きながら仕事を始めるのだが、やはりメールの事が気になっているのか集中出来なさそうだ。　今度の学会の資料等を見ながらも携帯をチラチラと見ている。 　そんな望の様子に和也は気になりながらも自分の方は今は恋人である裕実にメールを始めるのだ。 「よっしゃ！ 今日は仕事が終わったら、裕実とデート決定！」 　和也はわざとなのかでかい声で独り言を漏らすと仕事を始める。 　望はそんな和也の性格が羨ましくて仕方ないのかもしれない。 　和也は結構、素直なタイプだ。　心に思った事をハッキリと言うタイプでもあって、そこが望からしてみたら羨ましい所なのだ。 　一方、望の方は素直な性格ではない。　心に思っている事を表には出せないタイプだ。 　望は雄介がメールをして来ない事にイライラとしながら仕事をしているのだが和也の方は楽しく仕事をしている。 　そうだ、望が完全に仕事を終えてから既に一時間以上経っているのに未だ雄介から一向にメールが来る気配すらない。 「まだ、雄介からメール来ないのか？　ってか、さっきの事で雄介の奴怒ってんじゃねぇのかな？　だから、望が悪いんじゃねぇの？」 「でも、さっきの事は当たり前の事を言ったまでだろ？」 「だから、それをキツく言い過ぎたから雄介は怒ってるのと違うのか？」 　和也にそう言われると望の方も考えてしまう。 　和也の言う通りなのかもしれない。　もし自分が逆の立場だったらどうなんだろうか？　そうだ自分だって怒って帰ってしまうのかもしれない。 「どうだ？」 「……ああ、うん……確かに俺が悪いのかも……」 「だろ？　なら、雄介に謝りの一つでも入れてやれよ……」