385 / 503

ー空間ー51

 そう裕実は先に、申し訳なさそうに謝る。 「ん? 何? なんか、お前、俺に謝るような嘘を吐いたのか? 俺は別に何も感じなかったけどな」  そう、普通に返す和也。 いったい、裕実は和也にどんな嘘を吐いていたのであろうか。 「え? だからさっき、焼肉店の駐車場で、和也さんが僕の脈が早いって言った時ですよ。 僕はあの時、和也さんのことが好きだと言って、嘘を言ったんです。 あ、いや……和也さんのことは本気で好きですよ……それではなく、僕はてっきり焼肉屋の後は、ホ、ホテルに行くんだと思っていて緊張で、その脈が早かっただけですから」  裕実は、そう、本当に申し訳なさそうに頭を俯かせながら、さっきのことを告白する。 「ん? たったそれだけのことで謝る必要なんかないさ。 ってか、何となくは気付いてたっていうのかな? だから、何も言わずにしてたんだよ」  そう、笑顔で言うと、和也は言葉を続ける。 「人の気持ちって大事だよな? 特に恋人同士ってさ。 まぁ、お前と付き合い始めてからまだ裕実とはこう深く話したことはなかったけど、今日ので十分にお前のこと分かったかな? そう、お前が俺のこと、本気で好きだっていうことと、お前の頭の中では俺とホテルに行くことが分かって逆に嬉しいよ。 だって、俺だけが一方的に裕実のことが好きじゃないってことが分かったからさ」  そう、和也は裕実の言葉に対し真剣に語るのだ。

ともだちにシェアしよう!