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ー空間ー52

「それって、僕の気持ちを疑っていたってことですか?」 「違う! 違う! ただ俺は本気で裕実が俺のことを好きなのかな? って心配してただけさ……。 ほら、俺だって、今まで二人きりになる機会あんまりなかっただろ? 俺の方も望のことばっかり気にしてたしさ」 「そういうことだったんですね。 僕の方もやっと和也さんとデート出来て本当に嬉しいですからね」 「あ、ああ……だな」  やっと心の中まで通じ合えたのか、この二人に今やっと幸せな時間が訪れたのであろう。  それから和也はUターン出来る所で車を折り返し、裕実の気持ちも良く分かった所でホテルへと向かう。  ホテルの駐車場へと車を入れると、今度は本気で裕実は緊張している表情が見てとれる。  暗闇の中でも周りの街灯だけで十分に裕実の表情は分かる。  和也の方はそんな裕実の事が分かったのか、ホテルには向かわずに座席を倒し寄り掛かかるのだ。  久しぶりに運転したから少し疲れたというのもあるのだが、少し裕実の様子を伺いたかったという理由もあるからなのかもしれない。  確かに体を重ねるという目的で来たのだから、初めてここに来るのなら緊張しない訳がない。  だから和也は裕実が落ち着くのを待っていた。  暫くして和也が車から降りない事に気付いたのであろうか。 裕実は、 「和也さん、降りないんですか?」 「ああ、まぁ……今のところは裕実次第かな?」  そう、和也は裕実の方を向かずに言う。  それはきっと和也が裕実の方に向いて、これを言ってしまうと余計に意識してしまって余計に黙ってしまうかもしれないと思ったからだ。  だが裕実の方は膝に手を乗せ、俯き力を入れてしまっている状態でいたのだから。

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