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ー空間ー62
「あーんー……そうじゃないんですよ……その……自分から出る声が、女の人と変わらなくて……だから、恥ずかしくて……僕じゃないように思えて……和也さんに嫌われやしないんじゃないかと思ってしまっただけですから……ただそれだけなんです」
あまりの恥ずかしさに裕実は枕で顔を覆い、そう和也に告白するのだ。 確かに枕のせいで籠った声にはなっていたのだが、和也の耳にはその裕実の言葉が耳に入って来ていたのであろう。
和也はひと息吐くと今の裕実の言葉で十分に裕実の和也への想いが伝わってきたような気がした。
裕実の言葉というのは本当に素直な気持ちなんであろう。 望を引き合いに出してはいけないのであろうが、望とは違って恥ずかしがっても自分の心にある素直な言葉を言って来てくれる。 それが和也からすると本当に幸せな気持ちにさせてくれる言葉だ。
「あー! もう、無理っ! お前のせいでっていうのはおかしいんだけど……もう、俺自身が止められなくなっちまった……。 最後に一つだけ聞いていいか?」
再び和也は裕実の体を抱き締めると、
「本当にいいだよな? お前は俺の恋人で……」
そう言うと裕実は頭を頷かせる。
和也は本当に今、幸せの絶頂期にいるのかもしれない。 こんなにも今まで和也の事を愛してくれた人はいただろうか。 いや、いなかったのかもしれない。 そこは家族を除いてでだ。
和也だって昔は女性と付き合った事はあった。 だが今の裕実の様に心のこもった言葉は貰った覚えはない。
恋人同士、いや本気で好きな者同士だとこんなにも愛情というのを感じる事が出来るんだと今知った事だ。
「そっか……今ので十分に裕実が俺の事を好きだって気持ちは分かったからさ……顔を表に向けてくれねぇかな? 先に進めないからさ」
そう言った直後、和也は裕実に向かって笑顔を向けるのだが、まだ顔を横に向けている裕実にはその表情は見えていない。
だが、そんな裕実に和也はいくらでも待っている覚悟はある。
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