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ー空間ー102
和也が座っている運転席の左側に置いてあった携帯を裕実は取ろうとしていたのだが、和也にそう言われて、
「では、置いておきますね」
「ああ」
と返事をし、信号で車が止まると和也は今さっき来たメールを読み始める。
やはり和也の予想通り、そのメールの相手は雄介からだった。
『今、空港に着いたで』
その文章に和也は、
『後、十分位で着く』
それだけを返信し、和也が携帯を閉じたとほぼ同時に信号が青へと変わるのだ。
本当に裕実と望の間には会話がない。
こう静かな空間というのは和也からしてみたら苦手な部類に入る。
だが和也の方も今日は何だか話してしまうと、今日、雄介が空港に来てくれることを言ってしまいそうで、なかなか話題が見つからないようだ。
そうこうしているうちに車は空港の駐車場へと到着するのだ。
そして車を降りる三人。
「和也、後ろ、開けてくれねぇか?」
「はい? もう、行くつもりなのか!? だって、飛行機の時刻は夜なんだろ?」
「あ、ああ……まぁ、そうなんだけどさ。 だって、お前等ってこれから二人で出掛けるんじゃねぇのか?」
「ああ、まぁ……そうなんだけどさ」
そう和也の方は視線まで反らして曖昧に答える。
「ま、いいから……いいから……荷物このままにしといて、空港の中、探索しに行こうぜ! 俺達の方は勝手にここでデートさせてもらうからよ」
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