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ー空間ー107
「あ、ああ、そうだな……?」
何だか久しぶりに雄介の声を聞いたような気がする。
さっきまでは、きっと雄介に会った直前で心の中がパニック状態になっていたのだから、望にしてみたらやっとまともに雄介の声が耳に入ってきたのかもしれない。
本当に恋人の声とは呪文のようだ。
急に安心したような表情を見せる望。
「俺はだな……スパゲティーでいいかな?」
「ほな、俺はハンバーグステーキ!」
「はぁ!? よく、昼間っから、そんなもんが食えるよな?」
「しゃーないやんか……俺の方は朝から何も食わんでココまで来たんやからな……メッチャ、腹減ってんねんで。 望の方は逆にもっと食わんと痩せてまうでぇー」
雄介はそう言いながら望の頭をポンポンと撫でる。
「おい……ちょっと……人前でそんなことすんじゃねぇよ」
「ほなら、人前じゃなかったらええねんな?」
そう雄介の方は望のその言葉に対して満面の笑顔で言うのだ。
「はぁ!? そうじゃなくてさ……まったく、どうしてお前はそういい方に捉えるのかなぁ?」
そう望は今まともに雄介の顔を見てしまった気がする。 さっきは、いきなりの事過ぎて半分はパニック状態だったのだから、見ていたと言えば見ていたのだが、こうまともにはというのか記憶に残るという位は見ていなかったのかもしれない。
そう本当に久しぶりに雄介の顔をまともに見てしまった望は一瞬言葉を詰まらせる。
確かにいつもの雄介だ。 だけど何だか見てないうちに前より逞しくなったようにも思えるのは気のせいなのであろうか。
そんな二人が言い合っている中、急に裕実がポツリと言い出すのだ。
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