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ー空間ー110

 そう言い雄介は和也同様に望に抱きつこうとしたのだが、流石の望も人前では許す訳もなく、雄介はゴツンと一発望からグーで叩かれてしまい、雄介の行動はそこで終わってしまう。 「……痛っ」 「当たり前だ……痛いように叩いたんだからな」 「ホンマ……そういうとこ望って変わらんのやなぁ」  そう雄介はブツブツと文句を言いながら望から離れるときちんと自分の席へと座るのだ。 「そういや、注文決まったんだろ? 早くなんか頼まないとじゃねぇのか?」  望は立ち直りが早いというのか本来の目的を思い出したらしく和也達にそう促す。 「あ、ああ……スッカリと忘れてたぜ」  和也の方も体勢を立て直すと和也と裕実の方はまだメニューすら決めてなかったのかメニュー表を見始める。  一方、望はテーブルの下で手を伸ばし雄介の手を見付けると雄介の手をそっと握るのだ。  流石の雄介もその温もりに気付き一瞬は驚いたような表情を見せたものの、笑顔になると望の手を握り返す。  きっと今まで雄介に会えなかった分と目の前にいるカップルに触発されたのかもしれない。  雄介の方も望の性格をそろそろ分かっている。  人前なのに、雄介の手を握って来た手。  望の久しぶりの温もり。  こんな小さな幸せさえも今は十分なのかもしれない。  その小さな幸せまでも逃してはならないと思ったのか雄介はその事は和也達には黙っておく事にした。  そんな事を言ってしまえば望は間違いなくこの手を離してしまうだろう。  なら、このままの方がいいと思ったのかもしれない。 「おーし! 決まりっ! しかも、俺等は食事の後にパフェも食べる!!」

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