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ー空間ー112
「俺らはホテルに行ったんだよな。 だけど、俺だって好きだからと言って、すぐに裕実と体を重ねようとは思わなかったさ………だから、裕実の様子を見ながらって感じだったかな? ほら、いきなり体を重ねて、怖い思いさせたくなかったからさ。 そう、裕実にはもう何回聞いたかっていうほど、俺は確認したんだよな? そう、裕実はさ… 何回聞いても頷いてくれるのは嬉しかったんだけど… でも、それでも俺は不安で、で、ホテルに行く前にドライブをして裕実の様子を伺っていたってわけさ」
それを聞いて望は突っ込みを入れたかったのだが、そこで辞めておいた。
そう、望の中では和也にいきなり告白されて、それからすぐにというのか和也に抱かれた記憶があるからだ。 だから『お前な………あの時は俺の気持ちも考えずに俺のこと、抱いただろうが……』と言おうとしたのだが、そのことを和也の方もしっかりと覚えていたのか和也の方が自ら話し始める。
「俺が裕実に何度も確認したのは、前に望にいきなり抱いてしまったことがあっただろ? だからだったのかもしれないんだよな。 うん………望のこと、悲しませる結果になっちまったからさ、まぁ、流石の俺もあの出来事だけは反省したっていうのかな? だってさ、なんか愛のない感じって、虚しいだなんだもんな。 だから、裕実の時には何度も聞いたんだよ。 もう、二度と誰かを悲しませるのも自分が虚しくなるのも嫌だって思ったからな」
そう、和也は笑顔で話しているのだが、やはりどこか切なそうな表情も浮かばせていた。
「今更なんだけど………望………あの時は本当にゴメン……。 あんな無理やりな方法で人の心まではそう簡単に変えることはできないんだよな? そう、本当にあの時の俺はどうかしていたのかもしれない…… あそこまでして、雄介から望のこと奪おうとしてたんだからな………だけど、もう、望の心は雄介にだったかな? 本当はそれが悔しくて、雄介から望のことを奪おうとしてたんだ。 本当に雄介に望… ゴメン!」
和也はテーブルに頭がつくほどにまで頭を下げて目の前にいる二人に頭を下げるのだ。
そんな和也に先に声を上げたのは望だ。
「もう、そんな過去のことは気にすんなよ。 でも、お前さ…… あの後、変わってくれたじゃねぇか………俺らが喧嘩した時にフォローしてくれたのはお前だろ? 自分を犠牲にしてまでフォローしてくれたのはお前だろ? 俺にあんなことして、で、反省したんだからそれはそれでいいんじゃねぇのか?」
「……へ? 望!?」
その望の言葉を聞いて和也は驚いたように望の顔を見上げる。
今の望の言葉は意外だったのかもしれない。 まさか望からそんな風に言ってくれるとは思っていなかった事だろう。 確かに今までこんな真面目な話をしていなかったからなのかもしれないのだが。
「それに、今は俺にも和也にも恋人ができて、俺も和也も親友でいられてるんだから、それはそれでいいんじゃねぇのか?」
「ちょ………え? ちょ、望!」
そう、雄介はいい言葉だけをチョイスしていたのか雄介は嬉しそうな声を上げ、調子に乗った雄介は望に抱き付こうとしたのだが、その気配に気付いた望は雄介に再び拳骨を食らわすのだ。
「痛いやんか」
「調子に乗るお前が悪い」
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