そう望は雄介とは反対側を向いて小さな声でそうぶっきらぼうに答えるのだが例えどんな小さな声であっても好きな人の声とは逃さないと言ったところなんであろう。　今の望の言葉を聞いて雄介は目を丸くさせていた。 「ほなら、もう一回っ！」 　と雄介は嬉しそうな声で望の体へと抱き付くのだが隣でそれを聞いていた和也がそれを制止する。 「悪いけど、今日はもう時間がないし、明日は望が学会に出席しなきなんねぇんだろ？　だから、今日はもう終わりな」 　和也は雄介にそう言うと裕実を連れてお風呂場へと向かうのだ。 「あー、そうやったわぁ……ほなら、明日なっ！」 「さぁな……もう、明日は疲れちまって出来ねぇかもよ」 　望はそう言うと布団の中へと潜ってしまう。 　そうは言っていても明日は雄介に会うつもりだったのだから、するつもりだったのかもしれない。 　和也達がお風呂から上がると望は無言で立ち上がり雄介の方も望の後についてお風呂場へと向かう。 　そして二人は、また二人だけの世界になると雄介は望の体を後ろから抱き締めて望の頭だけを自分の方へと向けると唇を重ねる。 　あんだけ文句を言う望も素直な時は素直な訳で今は雄介からのキスを大人しく受けているようだ。 　そして少しだけの時間二人だけの時間を過ごすと和也達の方はもう着替えて出る準備をしていた。 　望も雄介もお風呂から上がると早速着替え始める。 　行く用意が出来た四人は再び空港に向けて和也の車で移動する。 　空港に向かう車の中というのは密室空間で四人は人目を気にせずイチャイチャ出来る場所でもあるのだが和也は運転をしている状況。　そして今日の望は後部座席に座っている。　だが人前ではイチャイチャな行動を好まない望はもう完全に雄介とは甘々モードではないようだ。　腕を組んで足までも組んで外の景色を眺めてしまっているのだから。 　望らしい行動と言えば望らしいのだが雄介からしてみたら不満だらけなのかもしれない。 　この四人がこうやって一緒にしかもプライベートで一緒にいるって事は滅多にはない。 　後部座席に座っている雄介と望に関しては手も口も空いているのに完全に望は何もしてこないでオーラ全開でそんな望に雄介が手を出したりキスをしたりというのが出来ない状況にため息を漏らす。 　前の二人も何かこう話すネタがないのか静かだ。 　そう、たまに聴こえてくるのはナビが案内してくれる声だけだ。 　だが、その静かな空間に耐えられない二人がいる。　それが雄介と和也だ。 　暫く和也が運転をしていると和也は大きなため息を吐く。 「ってかさー、四人もいるんだからさ……もうちょい何か話さないか？」 「そう言うねんけど、望がそもそも口を開こうとせぇへんねんって……」 　雄介は和也が居る運転席の方に顔を出してまで話をしている。 「お前等さぁ、久々の再会なんだろ？　ならさ、飛行機に乗る前にイチャイチャとかしたらどうなんだ？　飛行機に乗っちまったら、もう、そんな事は出来ないと思うぜ……」 「せやけどなぁー、望が完全に近寄るなオーラが凄いだもんな」 　雄介は望には聞こえないような声で和也にだけそう告げる。