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ー空間ー142

 しかし、なぜ今裕実にぶつかって来た男はこの時間にこの駐車場で慌てる必要があったのだろうか? それに、一瞬ではあったが、駐車場にある街灯で顔が見えたのだが、何となく見覚えがあったような気がしたのかもしれない。 和也は一瞬、首を傾げた。  とりあえず、和也は望たちに追いつくために急いで望たちの所へ向かうと、未だに雄介と望の間には距離があった。 本当に外では雄介と望は恋人か? っていう位のその微妙な距離感。 確かに同性同士というのは世間体ではあまり認められてはいないが、和也たちからしてみたら逆にそれが勿体無いような気がして仕方がない。  どうにか和也たちも望たちに追いつくと、望が、 「なぁ、まだ出発時間まであるんだけどさ……飯にしないか?」 「ああ、せやな……俺の方も丁度腹減ってきたしな」  雄介はそう言いながら望の肩へと手を乗せるのだ。 「ちょ、お前なぁ、外ではそんな事すんじゃねぇよ」  望の方はそう嫌そうに言うのだが、 「あんなぁ、そういうとこ、望、意識し過ぎやって……こんくらいなら、友達同士でも普通やろうが……」  そう言われると、流石の望でも返す言葉が見つからなかったらしい。  確かに雄介の言う通りだ。 肩に腕を乗せるくらいは普通の友達同士でもしているのだから。 「じゃあ、飯に行こうぜ……」  和也はそう言うと、さっきのファミレスへと向かうのだ。  しかし雄介と望に比べたら、和也と裕実の方はラブラブなようで、和也の方は裕実の手を離さず歩いているらしい。  ファミレスに入ると、望は奥の席へと座り、その隣には雄介。 そして望の前には和也が座って、その隣には裕実が座る。  四人は注文をすると、一番初めに口を開いたのは和也だ。 「なぁ、聞いてくれよー。 さっきさ、駐車場で裕実にぶつかってきた男がいたんだけどさ……まぁ、一応、裕実に向かって頭を下げることはしてきたんだけど……ってか、普通、あんな謝り方でいいのか?  せめて、口で『スイマセンでした』くらいは言うだろ?  本当に頭下げて来ただけってちゃんと謝ったってことになるもんなのか? まぁさ、裕実が怪我しなかったからいいようなもんだったんだけどさ」 「確かにそれは言えるわぁ。 まぁ、でも、ぶつかってきて頭くらい下げて行ったんだからええと違う? 今はぶつかってきても謝ることさえしない方が多い時代になってきたんやしな。 ホンマ、当たり前のことができないようになってきた時代やし」  和也と雄介はほぼ同時に息を吐く。  二人の言う通り、今の時代、なぜこんなにも人は冷たくなってしまったのだろうか?  たった一言それだけを言えば事は丸く収まるのに。 「本当だよ……普通は人にぶつかったら『スイマセン』だからな!」 「ホンマ和也の言う通りやわぁ……」 「まぁ、とりあえず、めんどくせぇから考えないようにしよう……!」  そう和也はその話題について諦めると、今度はいきなりニヤニヤとしだし、和也の前にいる望のことを見てくる。  流石にその様子に気付いた望は嫌そうに和也のことを見ていた。 「なんだよー、気持ち悪いなぁ」

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