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ー空間ー143

 望はそう和也に向かい言うと、和也は別にそんなことお構いなしに、 「いやな……さっきのホテルで、お前が案外可愛かったなぁーって思ってよ。 望ってさぁ、マジで仕事の時っていうのは、あんなに超が付くほどの真面目人間なのに、やっぱ雄介がいると違うっていうのかな? そうそう! 雄介といると、デレデレっていう感じだったしな……」  その和也の言葉に対し、望の顔が一瞬で赤くなり、もう和也の方には視線を向けずに壁の方へと視線を向けてしまった。 「望の奴……照れてやんの……可愛いよなぁ」  そう和也が望のことを弄っていると、その二人の間に入ってきたのは雄介だ。 だが、雄介は望のフォローに入るどころか、和也と一緒になって望のことを弄り始める。 「なぁ? 望ってそう可愛いところあるやろ? そこが俺には堪らへんのや……ホンマのホンマ……俺の息子さんにドストライク! って感じやしな」 「だろうな……」  和也は雄介の言葉でさらに顔をニヤニヤさせているようだ。 そしてさらに望のことを弄ろうとした時、何故か和也の隣にいる裕実の方から殺気を感じたようで、和也はその方向へと視線を移すと、裕実が頬を膨らませていた。  それに気づいた和也は、 「んー、やっぱ、お前は可愛いよなぁ。 今は望ばっかり構っていて、お前のこと構ってなかったから拗ねてるのか? 頬まで膨らませてさ」  和也は裕実の肩へと腕を回すと、その膨らんだ頬を突くのだ。 「そんなんじゃないですってばっ!」  そう裕実は体を振って和也の腕から逃れようとしたのだが、どうやら和也の腕から逃れることはできなかったようだ。  裕実も今まで自分がしてきたことが恥ずかしくなってきたのか、顔を俯かせてしまう。 「まぁ、望も可愛いねんけど……裕実もやっぱ可愛いもんなんやなぁ」  雄介はそう言うのだが、和也は雄介の耳を引き寄せると小さな声で、 「お前さぁ、また、そんなこと言ってると望のやつ、拗ねちまうぞー」 「え? あ、そうやったな。さっきここに来た時にそうやったんやっけ?」 「そうだろ?」 「せやけどな……望の場合には外やと構い過ぎると怒ってまうし、そういうとこ、外では大変って言うんかな?」  そう雄介は頭を掻きながらため息を吐く。 「確かにな……望って確かに恋人的には扱いにくいのかもな。 お前さぁ、ホント、望のこと好き好きーっていうのが凄いからよ……そうじゃなくて、今度は望みたくなってみたら?」 「望みたくって?」 「ん? 望みたく、外ではツンツンすんのー、そしたら、望がどんな反応するかっていうの気になんねぇ?」 「へ? え? あー」  雄介はその和也の提案に少し考えると、 「お! ええねっ! その提案もらった!」  今まで内緒話のように顔を近づけて話をしていた雄介と和也だったが、和也の意見に賛同した雄介は元の席へと戻ってきた。  それとほぼ同時くらいだっただろうか、注文した料理が運ばれてきた。  料理が運ばれてくると、望たちがいる席は急に静かになってしまったらしい。

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