605 / 1491
ー雪山ー34
「しゃーないやんか……望の中にいっぱい出してもうたんやから出すのに時間掛かってるんやしな」
「だから……それを早く出せって言ってんだ!」
そう望が雄介に向かって強く言ってしまった後は、もう雄介は何も言わなくなってしまった。
望は意外そうな表情をしながらも雄介の方にチラリと顔を向けてみる。
するとニヤニヤとしながら無言で望の中から白い液体を掻き出している雄介の姿があったのだ。
その雄介の表情に望は急に背中がゾクリとする。
そうだ雄介が黙ってしまう程怖いもんはない。
無言で雄介に中にある白い液体を出してもらっている中、望からしてみたら中を弄られているのと同じ状況なのだから声が出そうになっていた。 だが和也達もこの家に今日はいるのだから一生懸命望は手で口を塞いで声が出ないように頑張っているようだ。
「んー……」
そう危なく声が漏れそうになった頃。 体というか今まで双丘にだけ流れ出ていたお湯が離れていくのだ。
どうやら雄介は黙ったまま望の中から白い液体を出す行為を終わらせていた。
そして雄介の方は何故か終わらせると、本当に黙ったままお風呂場を後にしてしまう。
雄介が出て行ってしまった後、一人残された望。
急にいなくなってしまった雄介に虚しさを感じるのは気のせいであろうか。
望はそこでまたため息を吐く。
「また、俺の一言で雄介の事怒らせちまったみたいだな。 ホント、俺って懲りねぇの……」
望は自分の事をそう責めると、少し冷えてしまったであろう体にお湯をかけて再び体を洗うのだ。
望は洗っている中でフッとある事に気付く。
「……ったく。 ホント、アイツって優しい奴なんだな。 ま、俺には甘いっていうのかな? 豆っていうのもあるのかな? 本当に中綺麗にしていきやがった。 さっきみたいに中気持ち悪くねぇし」
望はそこで雄介の有り難みに気付くとシャワーで泡を流して着替える。
そして自分の部屋へと向かう途中にあるトイレを通過しようとした時だ。 トイレの中からこう呻き声みたいなのが聴こえてくる。
望はその声に体をビクリとさせると、そのうめき声みたいなのが聴こえてきたトイレの前で立ち止まる。
今の時間は夜中の二時。
確かに幽霊とかが出てきてもおかしくはない時間でもあるのだから。
ともだちにシェアしよう!