642 / 1491
ー雪山ー71
「ん?」
そう可愛く返事をする望。そして、
「ただ単に、今日は俺がお前とシたいだけだ」
「んー、それは分かったんやけど」
雄介は困った顔をすると、すぐに体を望の方へ向けて望を抱き締める。
「ホンマ、今日はどうしたん? 無理せんでも俺はお前の側から離れる気はないで、何がそんなに不安なん? 今日の望、ずっとそんな感じやしな」
望は雄介の胸の中から顔を上げ、不安そうな表情で雄介を見上げる。
「ん……?」
「お前は俺のこと嫌いか? だから、俺のことを抱けねぇっていうのか?」
「はぁ!?」
雄介の言葉は完全に流されてしまったようだ。そして、望の一方的な質問に雄介の方が意味が分かっていないようだ。
「あのー? 望……何を言ってるん?」
「むしろ、お前の方が日本語通じているのか?」
そう頬を膨らませて言う望。
「あ、ああ、まぁ、通じてはいるんやけどな」
そう返す雄介だが、今日は雄介の方が瞳を宙に浮かせている状態だ。
なんていうのか、今の望の言葉をそのまま返してやりたい衝動に駆られているらしいのだが、雄介はそのままにしておくことにしたらしい。
「望な……」
雄介は望の体から少し離し、望の肩に両手を付けて望の視線に合わせる。
「あんなぁ、俺がいつ、お前のこと嫌いになったって言った? そんなこと、一言も言うてへんやろ? それに、俺がお前のこと嫌いになったら、もう、俺はここに居てへんと思うで……お前の側から俺が居なくなってへんっていうことは、俺はお前のことが好きやっていう証拠やろ? それに、俺はこのままずっとお前のこと好きだっていう気持ちは変わらへんし、ずっとずっと側に居りたいっていう気持ちはずっと変わらへんしな。ってか、この気持ちどうしたらお前に伝えることができるん?」
「それは、お前が俺のこと抱いてくれたらだろ?」
今までの雄介の訴えは望に届いていなかったのだろうか。また話が振り出しに戻ってしまったようにも思える。
「それとな。今のお前の立場っていうの分かっておるんか? お前は今熱出しておるんやぞ。俺は熱でうなされているお前を襲うほど飢えてはないしな。逆に好きだからこそ、望に手を出さないっていうのも優しさの一つやろ? こんな時に抱いてもうて、逆に調子悪くさせてもうて死んでもうたら元も子もないやんか」
ともだちにシェアしよう!