644 / 1491

ー雪山ー73

「雄介……」  そう望は涙声で雄介の名前を呼ぶと、 「俺もお前のことが好きだからな……だから、ずっと俺の側に居てくれるよな?」  と、不安そうな声で言う。 「当たり前やんか。俺はずっと、お前の側に居るつもりやからな。せやから、心配すんなや」  望はその雄介の言葉に頷きながら、雄介の体にしがみつく。  その姿を見て安心したのか、雄介は微笑むのだ。 「ほなら、今日はちょい早いけど寝るか? 明日もあるわけやしな」  雄介のその言葉に頷く望。 「とりあえず、今は望が早く元気になるのを待つだけや」  雄介は望の頭をポンポンと撫でると、立ち上がって電気を消しに向かう。 「電気消してええんか?」  雄介は望に確認するかのように聞いてから、電気を切る。  真っ暗になった室内。雄介は窓から差し込む月明かりを頼りに望がいるベッドへと向かう。  そして、雄介はベッドに潜り込むと望の体を抱き締める。 「ん……」  そんな雄介の仕草がくすぐったかったのか、望の口から甘い声が漏れてくる。  雄介は望の首の下へ腕を差し込むと、望は擦り寄るかのように雄介の体に身を寄せる。  しばらくすると、雄介の隣で寝息を立てて寝ている望に気づく。 「寝れたんなら良かったわぁ。ほな、俺も寝るかな?」  雄介はそう一人呟くと、瞳を閉じる。  雄介が瞳を閉じると、隣で寝ている望の寝息が余計に聞こえてくる。  人間というのは視覚を奪われると聴覚が敏感になると言われている。  これがもし隣にいるのが会社の同僚とかなら意識しないだろう。しかし、恋人が隣に寝ていると思うと意識してしまうのは当然なのかもしれない。  そう思い、雄介は望とは反対側を向いて寝ようとした。しかし、今、雄介の腕は望の首の下にあるので、そう簡単には動かせない。  雄介は目を開けると天井を見上げるのだ。

ともだちにシェアしよう!