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ー雪山ー74

 真っ暗な天井には、うっすらと木目が見えるだけだ。  雄介がふっと気づくと、望の息が耳に当たっていることに気づく。  望の規則正しい寝息と同時に耳に当たる望の温かい息。意識しなくても、もう勝手に鼓動が速くなるに決まっている。  雄介は望の方に体を向けると、ちょうど今度は望の唇がとてつもなくいい位置にあることに気づくのだ。  流石の雄介もそこだけは我慢できなくなったのか、望の後頭部を押さえると、ゆっくりと望の唇へと自分の唇を近づけていく。  だが、こうして望には内緒という行動に、雄介の胸の鼓動は速く波打っているのかもしれない。  その時、いきなり目を開けた望。完全に望の視界は目の前だ。 「雄介ー、今、何しようとしてたんだ?」  いつも以上に低い声の望に、雄介は少し焦ってしまう。悪いことをしようとしたからなのか、完全に望の視線から外し天井を見上げてしまっていた。 「あー、いやー、なにも……? あ! そうそう! もう、俺の方も寝ようとしただけやしな」 「嘘つくな」  望はため息交じりにそう言うと、ゆっくり起き上がり、雄介の上を跨いでテーブルの上に置いてあった水を一気に飲み干す。 「そう、雄介が焦ってるってことはさ、何か俺にしようとしてたんじゃねぇのか? ……で、俺が起きてきて、余計に焦ったとか?」  確かに望が言っていることは合っている。  雄介は一つため息を吐くと、 「ホンマ参るわぁ……どうして、医者や看護師っていうのは、その人のこと、よく観察してねんやろな?」  雄介は再び一息吐くと、

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