646 / 1095

ー雪山ー75

「ん……まぁ、今、望にキスしようとしとった。これで、満足か?」  雄介は望同様に起き上がると片膝を立て、その膝の上に肘を乗せ、 「やっぱ、隣に好きな奴がおるのに何も出来ないものはやっぱ辛いねんなぁ? せやから、キスだけでもって思うたんやけど?」  雄介はそう笑顔で望の方を向くと、 「なら、そうすればいいだろ? お前が気が済むまでさ、別に我慢なんてする必要なんかあるのか? 俺らの仲は恋人同士なんだからさ」 「んー、まぁ、確かにそうやねんけど」  雄介は今の望の言葉に詰まる。 「ほら、今の望は熱出しておるし、そこはやっぱ無理させちゃいけないって思うしな」 「キ、キスに負担もクソもあるのか?」  望はそこまで言うと顔を赤らめる。  望だって、雄介とのキスは嫌いではない。好きな相手からのキスというのはしたいに決まっている。 「せやけど……」  今日の雄介はいつもの勢いはないようだ。  流石の望もそこに焦ったさを感じたのか、雄介の前まで行き、四つん這いの格好をして、雄介の瞳を捉えながら雄介の顔に自分の顔を近付けると唇を重ねた。 「これで、満足なのか?」  望の方は今の行為が恥ずかしすぎて顔を上げられないでいたが、雄介の声が全くもって聞こえてこないことに気付き、顔を上げた。  そして首を傾げて、 「どうしたんだ?」  望の視線の先にいる雄介は、目を見開き、何故か固まってしまっている。 「……ったく。こんなことで体を固まらせてるんじゃねぇよ。」  望はそう頭を掻きながら、顔を伏せて言う。 「あー、スマン! スマン! いきなり望からキスされるとは思ってなかったし、ちょっとビックリしておっただけや……なんやろ? やっぱ、好きな人からキスされたら嬉しいもんやんか」 「そんなこと、今まで何回もあった事だろ? いい加減慣れろよな。 こっちが恥ずかしくなっちまうし」 「あ、ああ、スマンな」

ともだちにシェアしよう!