657 / 1095

ー雪山ー86

 でもきっと雄介のことだ。 望が一人でヤる姿もまた見たいと思っているのかもしれない。  ふっと雄介が気付くと眼前くらいに望の顔があって、少しばかりビックリしたのだが直ぐに気持ちを入れ替えて、 「やっと……キスする気になったかいな」  と笑顔で返す。 「あ、ああ、まぁな……だけど……」  そこまで言うのだが、こう自分からキスをすることに慣れていない望だからなのか、暫く雄介の眼前でストップしている望。 だが望の中で何かが吹っ切れたのであろうか。 雄介の唇へと唇を重ねる。  さすがの望も自分からキスするということは慣れてきたようなのだが、こう人に命令されると恥ずかしかったのであろう。 だから躊躇していたのかもしれない。 「ん……」  望は簡単に唇を重ねるだけのキスをすると、どうやら雄介の方がそれだけでは足りなかったようだ。 「これだけなんか? なんか、もっとって感じがすんねんけど? それと、そろそろ、元に戻らへんか?」  雄介の方は半身を起こして、望の後頭部に手を回して引き寄せ雄介自らも唇を重ねる。  だが雄介の場合にはただたんに唇を重ねるだけのキスではなかった。  最初に望にされたようなキス以上に何度も何度も角度を変え、それからは望の口内へと舌を忍ばせると舌を巧みに動かし、望の舌も絡めてというキスを繰り返していた。 「ん……んん!!」  望はその雄介からの長いキスに息が続かなくなってきたのか、雄介の体から離れようと雄介の胸板を叩いてみるのだが、全くもって望の力では雄介の体は動く気配すらないようだ。  しかも雄介の場合には望の後頭部で支えているのは手一本だった。  暫くして雄介が望の唇から離れて行った時には、もう望の方は酸欠寸前だったのであろう。 肩で荒い呼吸繰り返していたのだから。 「キスって言うたら、これくらいしないとなぁ」  そう今度は余裕あるげに言う雄介。 「……ってか、今日は俺に任せろって言っただろうが……」  そう肩で荒い呼吸をしながら言う望。

ともだちにシェアしよう!