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ー雪山ー99

 望もご飯を食べ終え、食器を片付けてから自分の部屋へ向かい、スーツに着替えて家を出た。  病院へ向かうと、駐車場で和也と会った。 「おう!」 「よっ! 望! なんでかな? 久しぶりに会った気がするんだけどさ」 「それは気のせいだろ? 一昨日会ったばかりだぜ」 「まぁ……そうなんだけどさ、ほら、仕事場での望と家での望は違うだろ? だからかな?」  和也が何か言おうとしたのが分かったのか、望は歩きながら和也の頭をポカリと叩いた。 「ちゃんと遊びのことは忘れて、仕事に気持ちを切り替えろよ」 「俺の方はちゃんと切り替えてますよ。 望と違ってね」  和也はどうしてこうも意味ありげに言うのだろうか。和也という人物はこうした意味ありげな発言が多い気がする。  だからなのか、いらない記憶まで思い出させてくれるのだろうか。  今の和也の言い方からして、きっと、あの時のことを言っているのだろう。  そう、望と雄介が付き合い始めた頃のことを。

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