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ー雪山ー100

 あの頃の望は、雄介と共に仕事が忙しくて会えないことに毎日のようにイライラしていたような気がする。  その時、和也に「意外だよな。望って仕事にプライベートを持ち込んでくるとは思ってなかったぜ」と言われたことが確かにあった。 「とりあえず、今の俺はそういうところ、ちゃんと分けてますー。お前はどうなんだよ」 「俺は平気だって言ってんだろ?」  二人は同じ部屋ということもあって、部屋までの道のりを歩調を合わせて歩いていた。 「なぁ、それより、裕実は?」 「ん? 喧嘩したから、今日は一緒に来てねぇけど……」 「…はぁ!? あんなに仲が良かったのにか?」 「まぁ、その辺はよく分からないんだけどさ。裕実が『和也さんって優しいんですけど、意地悪し過ぎですから』って言ってたかな」  そう普通に話す和也だが、確かに裕実の言葉に納得できるような気がする。 「まぁ、裕実が言いたいことは分かるかな? だけど、お前はそれでいいのか?」 「だって、仕方ねぇじゃん……そこは、俺の性格みたいなもんなんだからさ。性格っていうのは直そうと思えば直せるんだけどさ。ま、とりあえずいいんじゃねぇ? これで、俺が仕事にプライベートのこと持ち出さないってことが分かっただろ?」 「ん? あ、ああ……まぁ……確かにそうかもしれねぇけどさ」  和也と裕実が喧嘩したというのは意外だったのかもしれない。  部屋に入ってロッカーで着替え終えると、二人は時間までソファに腰を下ろして時間を潰した。 「お前は裕実のこと心配じゃねぇのか?」 「ん? そうだなぁ、ま、心配だと言えば心配なんだけど……でも、気にしていても仕方がないだろ? そう、だから、仕事の時には気持ちを切り替えてるんだよ。裕実のことは仕事が終わってから考えることにするよ」 「まぁ、確かにそこはそうなんだけどさ。でも、今日の朝、雄介が俺のことすごく心配してくれたんだ。昨日の夜、俺、熱出しちまったんだよな。で、朝、雄介が仕事に行く前に『もしダメそうだったら、仕事途中で帰ってこいや。望が寂しい思いするんやったら和也達を呼んでもええし』って言ってたんだけど……」  その望の言葉に和也はクスクスと笑った。

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