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ー雪山ー112
そこで望が姿を現す。
「望!」
「和也ー、まったく、遅いと思ってたら、何をしてるんだ?」
待たされていたからか、少し不機嫌そうに来る望。しかし次の瞬間、和也が男性に腕を掴まれている姿が目に入り、その男性に視線を向けると、望にも見覚えのある人物だった。
「新城さん?」
「あ、吉良先生でしたか?この前まで貴方の病院でお世話になりました」
「はぁ……まぁ……元気になられたのなら良かったです。ところで、和也と何を話しているんです?」
確かに望は和也の救世主になりそうだが、新城には勝てないだろう。
望は頭の回転が速いかもしれないが、体力では和也よりも劣る。新城相手では、二人に勝ち目はないかもしれない。
「ただ、私は梅沢さんをうちの病院に引き抜こうと声をかけただけですよ」
その新城の言葉に目を丸くする望。
だがすぐにいつもの冷静な表情に戻し、眼鏡のブリッジをクイッと上げて、
「とりあえず、今は和也の手を離してもらえませんか?それからでないと話ができませんから」
と冷静に返す望。
「梅沢さんがその件について『うん』と言うまで離さないと言ったら?」
「そうした場合には、警察を呼ばせていただきます。話だけで済ませるなら、警察沙汰にはしませんけど」
そう言うと、新城はしぶしぶ和也の手を離す。
和也は新城からすぐに離れて望の隣に立つ。
そこで安堵のため息を漏らす和也。
「吉良先生……私から梅沢さんを離したということは、どういうことか分かっていますよね?」
その新城の言葉に固まる望と和也。そして、新城はまだ余裕があるのか、満面の笑顔で二人を見つめている。
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