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ー雪山ー113
「特に、私があなたから和也を離したのは、そういう意味ではありませんよ。あなたが何と言おうと、和也をあなたが働いている病院に渡す気はありませんから。もちろん、和也があなたの病院で働きたいと言うのであれば話は別ですけどね」
今度は望の方が、余裕のある笑顔で新城を見上げる。
「俺が望の働いている病院以外で働くわけがないだろうがっ! 俺は望の病院が一番なんだからよ! 知り合いもたくさんいるしっ! 何よりも望と一緒に働けるのが一番なんだからなっ! 金を積まれようと、金なんかより友情の方が上に決まってんだろうがっ!」
和也も新城に伝わるように言う。
「俺はそんなことでは心は揺るがないぞっ! 労働時間だって今の時間でちょうどいいくらいなんだからなっ!」
和也が新城に向かって訴えるが、新城の方はまだ余裕があるのか、クスクス笑っているだけだ。
その新城の笑みに、自信を無くしてきたのか、和也と望は新城と自分たちを交互に見ている。
「まぁ、今日はとりあえずいいとしましょうか? でも、まだ私が梅沢さんを諦めたわけではありませんからね」
そう新城は意味ありげに言うと、急に怖いくらいに微笑み、望の横にいる和也を見つめる。そして、和也の腕を引っ張って自分の方へ引き寄せると、軽く和也の唇に唇を重ねた。
一瞬だったため、何が起きたのかさえ分かっていない様子の和也。
だが次の瞬間には、新城の気配はもうなく、遠くの方で和也に向かって手を振っている新城の姿が見えるだけだ。
「……ったく……実は俺に対してこういうことなんじゃねぇのか?」
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