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ー雪山ー120

「やっぱり、仕事が終わってからの一杯っていうのは美味いよな」  和也はビールを飲みながら、望がお風呂に入っている時間を、自分の好きなテレビチャンネルを見て過ごす。  シャワーの音が止み、続いてお風呂のドアを開ける音が聞こえてくる。  和也は望が完全に出てくるまでの間、一切望の方には視線を向けず、テレビの方へ視線を向けていた。 「風呂、ありがとうな」 「じゃ、次は俺が入ってくるからさ。俺が出てくるまでゆっくりしててよ。あ! 調子が悪いんだったら先に寝てても構わねぇけどな。その前に薬飲んでおいた方がいいんじゃねぇのか?薬、テーブルの上に出しておいたからさ」  和也は望にそう告げると、部屋着にしているスウェットを手にして風呂場へと向かう。 「体調の方は悪くはねぇと思うんだけどな?」  望はそう独り言を漏らしながらソファへと腰を下ろす。  風呂から上がったばかりの体には、この黒色の革の冷たさがちょうどいい。望は完全にソファの背もたれに寄り掛かると、頭がちょうどソファの縁の位置だったらしい。そこに頭を乗せる。  望は完全にリラックスモードに入ってしまい、エアコンで暖められた部屋が本当に心地いい気温となってしまったのか、疲れた体にはちょうど良かったのであろう。いつの間にか、望は瞳を閉じ、意識まで飛ばしてしまっていたようだ。  望が次に気付いた時には、和也がスウェットを着て首にタオルを巻いて望のことを覗き込んでいる姿が目に入った。 「望ー」  和也は腰に手を当て、まるで母親が子供を叱る時のように怒った表情で、 「体調が悪いんだったら、先にベッドで寝てても良いって言っておいただろ?」 「あ、いや……寄り掛かってたら、気持ち良くなっちまって、それで、うとうとってしてただけだよ」 「……それで、薬の方はちゃんと飲んだのか?」  和也の表情はまだ変わっていないようだ。 「とりあえず、平気そうだったから、薬は飲んでねぇよ」

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