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ー雪山ー121
「強がってんじゃねぇよ。望が元々そういう性格っていうのは分かってるからさ。無理な時には無理って言えよ。病気の時っていうのは甘えていい時なんだからさ、もっと、甘えていいんだぜ」
そう和也は優しくも厳しく諭すように言うのだ。
「ってかさ、俺の方は全然無理してるって感じはしねぇんだけどな。それに和也の方は俺の心配するよりか裕実の心配をした方がいいんじゃねぇのか?」
そう望が言うと、和也は痛い所を突かれたように焦った表情を見せた。
今まで望のことばかり考えていて、完全に裕実のことを忘れていたようだ。
和也はここに帰ってきてから望のことで頭がいっぱいで、裕実のことを完全に忘れていたのだが、今の望の一言で思い出してしまったのかもしれない。
「じゃ、俺は先に布団の方に入らせてもらうからな」
「ああ」
和也は今の望の一言で足を止め、ソファに腰を下ろした。
そしてガラステーブルの上にある携帯を見つめ、今日は一度も裕実とメールや電話をしていないことを思い出したようだ。
望が布団に入った後、和也は携帯を手にした。そして携帯を開くのだが、やはり今日は裕実からもメールや電話が入っていないことに気付く。
今日一日、仕事や望との時間で和也は裕実の存在を忘れていたらしいのだが、一人になると頭に浮かんでくるのは裕実のことなのであろう。
少し離れて分かる恋人という存在。今まで和也は裕実とは喧嘩したことはなかったはずだ。だからなのか少し寂しげな表情をしている。
和也は携帯を手にし、携帯の画面を見つめると意を決したように『裕実』へとカーソルを合わせメールを打ち始める。
だが和也が書いたのはたった一言だ。いつも裕実と寝るときに交わす挨拶だけだ。
『おやすみ……裕実……』
と……。
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