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ー雪山ー139

 その望の行動に疑問符が浮かんだのは、和也だけであろう。  和也が望のことをポンポンと頭などを撫でたことはあったが、望がこういうふうに和也の頭を撫でたことはなかった。  和也は望が去った後に裕実に向かってアイコンタクトを送る。  そのアイコンタクトに対して、裕実は目をパチクリとさせていた。 「……って、こういうことは分からないのかよ」  そう和也はため息混じりに小さな声で呟く。 「なんですか?」 「いいよー。もう、俺たちも寝ようぜ……」  和也は今さっきまで裕実に羽交い締めにされていたため、裕実の上に乗っかっている状態だった体を起こし、ベッドの方へと向かう。裕実は今さっきの和也の言葉に首を傾げながらも、和也に付いてベッドの方へ向かう。  さすがに和也の家のベッドはダブルベッドではあるが、男三人が乗るとさすがに狭い感じがする。しかし仲間同士なので、体が触れても気にならないのだろう。  望が窓側に寝て、和也が真ん中、そして裕実がその隣に横になっている。  当然、和也は裕実側を向くので、望とは背中合わせで寝ることになった。  もうあと数時間しか寝られないが、寝ないよりはマシという感じなのであろう。  そして次の日の夕方。  望が仕事を終え、部屋で携帯のメールをチェックしていると、雄介からメールが入っていた。  望はソファに座って、雄介からのメールを読み始める。  そして読み終えると、 「和也ー!」  と嬉しそうな声で和也のことを呼ぶ望。 「なんだよー。その嬉しそうな感じは……」  和也はそう言いながら、望が座っているソファの後ろから顔を出してきた。 「おい……顔近ぇよ……」  そう言いながら、望は和也の顔を後ろへ押す。 「ちぇっ!」  とその望の行動に口をとがらせたが、望がいつもの望に戻っていることに安心したのか、微笑む。 「……で、どうしたんだよ」 「ほら、雄介って今日休みじゃんか……だから、スキーの予約してくれたみたいだぜ。『来週の土曜日にスキー場と泊まるところ確保できたわぁ』だってさ」 「あ、ああ……ってか、望ってスキーに行くの楽しみにしてたのか? 今、すっげぇ嬉しそうだったけど」 「別にそうじゃねぇんだけど……」  そう望は素っ気なく返事をするものの、和也はニヤけたような表情で、

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