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ー雪山ー141

 裕実のその的確な言葉に、和也は言葉を返せなくなってしまったようだ。  車はいつの間にか望の家の門の前に到着し、まず和也の車に乗り込んできたのは雄介だった。  雄介は車に乗り込むと、笑顔で言った。 「和也と裕実に会うのは久しぶりな気がすんねんけどなぁ」 「ま、確かにそうなのかもしれないな……ま、一週間ぶりくらいか?」 「せやな……」  そう簡単に挨拶を済ませると、雄介に続いて望も車へと乗り込んできた。 「とりあえず、最初のサービスエリアまでは俺が運転するけど、次は誰が運転するんだ?」  和也はそう言いながら車を出発させた。 「望は帰りの運転がええか? それなら、俺が運転するわぁ。ま、車の運転は久しぶりやねんけど……」 「久しぶりってどれくらい運転してねぇんだよ」  望は雄介の発言に驚いたような表情をしながら、雄介を見上げた。 「そりゃな……こっちに戻ってきてからは全然運転なんかしてなかったしな」 「そんなので長距離走ることできるのか?」 「ま、問題ないやろ? 頭やなくて体が覚えてるやろうしな」  雄介は笑っているが、望はどうやら納得がいかないようで、 「お前なぁ、一人で運転してんじゃねぇんだぞ! みんながいるってことは、運転手が責任を持っていつも以上に慎重に運転しなきゃならねぇんだからな」  望は雄介の言葉に怒っているらしく、雄介に向かって怒鳴るように言った。 「流石の俺でもそんくらいのこと分かってるって」 「分かってるんだったら、笑いながら言うところじゃねぇだろ……お前はさ……真面目に言うところとふざけて言うところ、間違ってるんだよ」  望は雄介に向かって呆れたように言い、足を組んで窓の外に流れる景色を眺めてしまった。  一方、雄介は望の言葉に息を吐き、望同様に肘を窓の縁へ掛けて窓の外に流れる景色を眺めた。 「なんでなんかなぁ? 望が家と外ではこうも性格が違うのは?」  雄介は独り言のように言葉を漏らした。 「……ったく。車に乗った早々に喧嘩すんなよな。せっかく、羽を伸ばす旅行だろ?」

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