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ー雪山ー142
「しゃーないやんか……望が最初っからあんなこと言うねんからー」
和也も雄介も、望の性格は十分に熟知しているつもりだ。
雄介の言う通り、望は家では甘えん坊なのかもしれないが、外では雄介に対して素っ気ない態度を取るのは間違いない。だから、外での二人は喧嘩が絶えないのであろう。
「じゃ、いいよ……行きは俺が運転するし、帰りは望が運転するでいいだろ?それなら、望の方は文句ねぇのか?」
和也の言葉にも、まったく返事をしなくなってしまった望。和也はそんな望の態度に息を吐くと、
「つーかさ、雄介はたまには自分の車使えよな……あるんだろ?」
「ん? 車は今回実家に置いて来たで。だってな、望が持ってるんやもん、必要ないやんか」
「……って、それって、そのうちペーパードライバーになっちまうぜ」
「ん、まぁ、それはそれでええやんか……って思ってんねんけどな。それに、やっぱ、望が車持ってるんやし、二台あってもしゃーないやんか……だってな、どっか行く時にだってデートに行く時にだって、望の車があればええねんやろうしな。それに、東京に住んでるとあんまり車使わない方が多いやんか。近くにはコンビニもあるし、駅にも近いしな……逆に車って使う機会少ないっていうんかな?」
その雄介の言い訳に納得する和也。確かに雄介の言う通りかもしれない。車が必要だと思えば必要だが、必要ないといえば必要はないからだ。
「まぁ、確かに。なら、望とデートするときくらい雄介が運転するようにすればいいんじゃねぇのか? わからねぇけど、ホント、運転の仕方さえ忘れてしまったらどうするんだ?」
そう和也は、場の雰囲気を和ませるために、ふざけたような口調で言った。
「せやな、今度っからそうさせてもらうわぁー」
雄介は笑顔になると望の方に顔を向け、
「今、和也の言葉聞いておったやろ? 今度っからそうすることにせぇへん?」
その言葉に、まだ望は窓の外を眺めているのだが、
「それくらいなら、構わねぇぜ……」
と答えた。
「ほなら、それで決まりやな」
そんな風に喜ぶ雄介に、望は窓の外を眺めながらクスリとしていた。
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