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ー雪山ー143
以前、雄介が運転する車に望が乗ったことがあった。その時も久しぶりに乗ったというわりには安心して隣にいられた記憶がある。しかし、雄介の運転する車に乗るのは自分だけだと思い込んでいる望は、もう完全に雄介にハマってしまっている証拠だろう。
「なあ、前から思ってたんだけど……俺が運転すると何で静かになるわけ? 俺的にはこの空気が嫌だって前に言ったじゃねえか」
「ほな、言い出しっぺが盛り上げろやぁ」
「盛り上げてもいいけど、運転に失敗しても知らないからな」
「……って何する気やったん?」
「そりゃ、裕実とイチャイチャな事を」
和也はそう言いながら片手運転で裕実の肩へと腕を回し、ちらりと後ろにいる雄介たちの方へ視線を向ける。
「お前の方こそ危ないわぁー。ちゃんと前向いて運転しぃ! 次のサービスエリアで望に運転交代させるで……」
「俺は別にそれでも構わないけどな。だって、俺、裕実と車の中でイチャイチャしたことねぇもん!」
さすがの和也もすぐに裕実から離れて運転に集中する。
「ほな、次のサービスエリアで望と交代したらええやんか。そしたら、裕実と和也は後部座席でイチャイチャなことができるんやろ? そうそう、俺たちはそないなこと外じゃあできへんしな……それで、和也はええねんやろ?」
「まぁな。それじゃあ、次のサービスエリアで望と運転交代!」
和也はそう嬉しそうに言うと、何も返事をしない望に言葉を振る。
「望、本当にそれでいいのか?」
「ああ、いい……。俺の方もじっとしてるよりかは車でも運転していた方がいいからな」
「じゃあ、決まりなっ!」
和也は望の様子にふっと気付く。雄介の言う通り、確かに望は雄介に甘えたりはしないのだが、病院とプライベートでは少し違う気がする。
病院の二人だけの部屋で望と二人きりでいると、和也とはふざけたりする感じなのに、四人の時には逆に和也とはふざけないという感じだからだ。
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