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ー雪山ー148

 雄介は和也のその呼びかけに首を傾げながらも和也の方に耳を傾ける。 「なぁ……この前、望が熱出した時があっただろ? その時さ、望の奴、様子おかしくなかったか?」 「望の様子か?」  和也に言われて雄介は少し考える。  しばらく考えていた雄介だったが、何か思い出したのか急に大きな声を出して、 「あ? おう! あったわぁ!」  その雄介が出した大声に和也は雄介の口を急いで塞ぐ。 「別に……この事について望に内緒って訳じゃねぇんだけどさ。その事について、何か分かったような気がしたんだよな」 「ほんで?」 「雄介……とりあえず、熱を出している望には気をつけた方がいいぞ……ま、お前の場合には恋人だからいいと思うんだけどさ」  その和也の言葉に、まだ和也が言ってることが理解できていないのか、雄介は首を傾げてしまっている。 「ん? 何に気を付けなあかんの?」 「望が前に記憶喪失になった時のこと覚えてるか?」 「ああ、当たり前やんか。望が記憶喪失になったっていうより、自分があの場から逃げ出したようにレスキュー隊の訓練の方に行ってもうたっていう方の印象の方が強かったからな。それに、そこは恋人として逃げてはいけないとこだったと思うし」 「ああ、まぁ、そこはいいとしてさ」  和也は間を空けると、 「その時の後遺症が今出てきているみたいなんだよな?」 「……へ?」 「まだ、説明しないと分からないのかよ。んじゃあ、望が熱を出した時にいつもと違う所は?」 「望がいつもより積極的で素直になる所やな?」  そう雄介はその時のことを思い出しているのか、顔をニヤニヤとさせてしまっている。 「今……その話でニヤニヤってする所じゃねぇんだけど……。とりあえず、俺の話をよく聞けよ」 「はいはい……ほんで?」  とりあえず雄介は和也の言葉でニヤけたような表情を止め、和也の方に視線を向ける。  その雄介の行動に和也はため息を吐くと、 「だから、記憶を無くした時の望もそうだっただろ? しかも、熱を出した時の望もそうだった。そこで、俺は望に相談された訳……そう! 前回お前に抱かれた時の記憶がねぇってな。しかも、雄介にもその事、言ってたんじゃねぇのか? 望は昨日の夜の記憶がないってな」 「ああ、確かにそないな事言うておったわなぁ」 「だろ? 確かに、熱を出した時にだけ、そういう風になるっていうのだから、生活している上では支障はねぇんだろうけどさ。ま、熱出した時の望には気を付けろってことだよ」

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