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ー雪山ー164

「な、望? まだ、体の方調子悪いんか?」  雄介はそう望を怒らせないように当たり障りのない会話から始めたらしい。 「あ、ああ、まだ、ちょっとな」  望の方は、雄介の言葉にちょっと焦ったように答える。  だが、その当たり障りのない言葉に雄介はちょっと意地悪を仕掛けていた。その言葉の返答によって望がどんな感じなのかを確かめていたらしい。  焦ったように答えたということは、特に望は体の調子が悪くないということなのだろう。  望の場合、プライドが高い。だからストレートに誘おうとすると絶対に断られるのは分かっている。だから、こう上手く会話をしながら遠回しに誘うしかないのだ。 「ま、まぁ……まだ、調子が悪いんやったら、明日もスキーはやめておきや。そうそう! 明日も俺達だけで楽しんでくるし、まぁ、無理は禁物やしな」  雄介は優しいような望を突き放すような感じで言ってみた。  そんな雄介の言葉に反応したのは望だ。  今はまだ雄介とは反対側を向いている望だが、その雄介の言葉にどうやら反応を見せている。一瞬だけだが耳をピクリとさせたようにも思える。  望は雄介の言葉に少し黙っていたが、 「明日は行く……」  そうぼそりと呟くように言った。  そうだ、きっと今日は望はここに一人残されて考えていたのだろう。やはり、ここに一人残されているよりは一緒に行って楽しんだ方がいいのかもしれないと。  それに望はみんなにはスキーができると言ったのだから、できるところを見せなければ事実だということを証明できないとも思ったのかもしれない。 「うん……まぁ、それやったら、明日はみんなでスキーしに行こうなぁ」 「ああ……」  望がそう返事した反面、雄介には少し心配事があるようだ。

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