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ー雪山ー167

 望も裕実も全然料理ができないわけではないのだが、やはりキッチンにそんなに人数はいらないと思っているのだろう。そして、あの二人が率先してやってくれるからいいと思っているのかもしれない。 「あ、ああ、大丈夫だ」  と裕実からの問いにそう答えてしまっている望。  望はそう言いながら眼鏡の下に手を入れて目を擦ると、ソファへと寄りかかる。  裕実はそんな望の様子を見ながら話を続ける。 「じゃあ、明日は僕たちと楽しみましょうねー」  そう裕実は手を叩いて嬉しそうに言うのだ。  だが裕実には望にそう話を振った理由があった。  そう、人間というのは嘘を吐く時に癖というものがある。視線を宙に浮かせたり、頭を掻いたりという癖が一般的だろう。だが裕実は望が嘘を吐いている時の癖を知らない。だから望のことを観察するしか嘘を見破る方法がないということだ。もし望が何かしら嘘を吐いているのなら、先に言って行動をしてくるはずだろう。 「それに、今日は僕、和也さんに教えてもらったので初心者コースで滑れるようになったんですよー! だから、明日はみんな滑れるんだから、上級者コースで滑りましょうって和也さんが言ってましたよ。なので、明日は上級者コースで滑りましょうね。ま、僕的にはいきなりなんで怖いんですけど、今日、和也さんに、もうこれなら大丈夫だって! って言われたので大丈夫なのかな? とは思っているので、明日は僕も頑張りますからっ!」  そう裕実は事実を交えながら望の観察を続けていた。  裕実が話すのを望は裕実の瞳をじっと見て聞いているようだ。  やはりプライドが高い望ということなのだろうか。それとも、やはり、そこは和也たちと同じで医療関係者だからなのだろうか。もしかしたら裕実が探りを入れていることに気付いているのだろうか。そこは分からないのだが、どうやら裕実が話していることに若干警戒しているのかもしれない。そしてボロを出さないようにしているのだろう。  普通の人間なら嘘を吐いている時というのは相手の目を見て話すということはできない。それを知っているからなのか、望は逆に裕実の目を見て話をしている。 「そうだな、明日はみんなで上級者コースからやろうか?」  そして、嘘を吐いている人間というのは噛んでしまうということだ。そこも望からしてみたら注意しなくてはならない所だろう。  裕実からしてみたら今の望は嘘を吐いているようには見えない。寧ろ通常の人間と同じ行動をしているのだから、癖とかには当てはまらないようにも思える。  そんな望に裕実は息を吐く。  もしかしたら裕実はこう思っているのかもしれない。 『流石は望さんですね。完全に嘘を吐いている人間の癖には当てはまらないようです。確かに、望さんが言ってる事は正しいのかもしれません』と……。

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