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ー雪山ー172

「何でだろうな? 気づいたら辞めてたって感じだったかな?」  その言葉に反応したのは和也だった。 「あー! 分かった! 望がタバコ辞めた理由が! そうだ! 雄介ができたからだ! そういや、望に恋人ができてから、急に望がタバコ吸わなくなったような気がするしな!」  急に興奮気味な和也。 「それは……」  望は和也に何か反論しようとしたのだが、和也が言ってることはあながち嘘ではないことに気付いてしまったのであろう。何も言い返す言葉が出てこなかったのだから。 「やっぱり、そこはそうなんじゃねぇの? それに、雄介が吸わない人間だったしな。だから、望は辞めることができたんじゃねぇのか? そういや、雄介はタバコは吸わねぇの?」  そう今度は雄介の方に話題を振る和也。 「そりゃな、そこは当たり前やんかぁ。レスキュー隊になる前は消防士やったんやで、火を消す人間が自ら火を起こしてどうすんねん。知っておるか? タバコの火の不始末で火事になるケースっていうのは多いんやからな! せやから、タバコは絶対に吸わん! まぁ、体にも悪いしな」 「そうかー、雄介は初めっから消防士になりたかったんだな」 「そりゃ、親父がそうやったからな」 「親父が!? それじゃあ、ある意味、雄介は望と同じような感じだったんだな?」 「とりあえずはそんな感じなんかな? それに、今、親父は消防庁の官僚の方しとるしな。俺の方もやっとレスキュー隊まで来れたんやから、早よ、上の方目指さんと、そこは、やっぱ、親父より上の方を目指さんとって思うしなぁ」  望は雄介の言葉にふっと気付く。 「な、今さぁ、お前、自分の親父が消防庁の官僚だって言ってたよな? まさかとは思うんだけど、ウチの親父とお前んところの親父と仲がいいんじゃないんだろうな?」 「そりゃないやろ? でも、何で、望はそう思ったん? 何か根拠みたいのはあるんか?」 「いやなぁ、前にさ、お前が震災の後に帰ってた時に言ってたんだよ。俺の親父が消防庁に知り合いが居るってな。そこで、言ってたのが、『雄介くんを消防庁にいる知り合いに頼んで東京に戻してもいい』って言ってたんだよ。だから、まさか? って、今の雄介の言葉でそう思ったって訳」  その望の言葉に雄介は食べていた肉を喉に詰まらせ、一気にビールで流し込んだ。 「それ、ホンマの話か!?」 「ああ……」 「まさか、俺の親父とお前の親父が知り合いなんかな?」 「ありえない話ではないよな?」  その二人の会話に首を突っ込んできたのは和也だ。  和也はお酒のせいで少し顔を赤らめて腕を組んで考えている。

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