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ー雪山ー184

「平気だろ? さすがに雷雲ではないだろうしさ……」 「え? あれは雷雲ではないですよ。あれは雪を降らせるような雨雲じゃないでしょうか?」 「雪を降らせるような雨雲? でも、そんなに大して降らないんじゃないのか? 大丈夫だって! 次! 高いところから行こうぜ!」 「まぁ、そうやな。昨日は時間なかったし、近場におったから、今日はそこから行くか!」 「よし! 行こうぜ!」  四人はそう決めると、再びリフトに乗って今度は一番難しいコースへと向かった。  一番難しいコースは下の方に比べると人もまばらで、むしろ今は誰もいないに等しいのかもしれない。視界も霧で覆われ、コテージさえ見えない場所だ。しかも、いきなりの急斜面なコースでもある。  しかも、さっきまで曇りだったはずなのに、上の方はもう吹雪いてきていて前も見えなくなっている。  ゴーグルをつけていても、雪がゴーグルに叩きつけられるほどの吹雪で、顔はその吹雪で痛いほど寒い。 「こりゃ、まずいな。早よ行かんと危ないかもしれへんわ。俺や和也は平気なのかもしれへんけど、望や裕実は危険って感じがするしな」  そう雄介は言うが、この風の中ではきっと和也たちには聞こえていないのかもしれない。返事さえないのだから。  スキー場に来慣れている雄介と和也は、危険を感じたのか先に滑り出した。  難しいコースでは、ほぼ隣同士で滑るのは難しいと思ったのか、和也と雄介は二人を誘導するつもりで先に滑り出したらしい。しかし、さすがに望も裕実もこの急斜面に足元がすくんでしまい、なかなか一歩を踏み出せないでいるようだ。  しかし、前に進まなければコテージに帰ることができないと思った二人は、アイコンタクトと共に滑り始めた。  しかし、さすが急斜面だけあって、さっき滑った場所とは全然違うスピードが出ていた。

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