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ー雪山ー185

 しかし、この視界では下までどれくらいあるのかが分からない状態だ。望と裕実がいくら滑って行っても、コテージさえも未だに見えてこない。もしかしたらコースを外してしまっているのではないかと思うくらいだ。と、その時、ちょうどいいタイミングで山小屋みたいなのが見えてきて、望と裕実は再びアイコンタクトを取ると山小屋の中へと入って行った。 「まさか、こんな所に山小屋があるなんてな」  望は先に山小屋の中に入って様子をうかがった。  しかし、なぜこんな所に鍵もかかっていないような山小屋があるのだろうか。  そこも不思議に思いながら中を見ていると、そこにはテーブルも暖炉もあって、数時間くらいなら寒さをしのげそうな感じだ。しかも手入れがされているのか、埃が溜まっている気配がなかった。 「望さん? もしかして、ここはもしもの時の避難所なんじゃないでしょうか? だって、入ってくるドアの所にそう書いてありましたからね」 「なんだ、そうだったのか。よく、裕実は見てたな。だから、埃とかが溜まってないんだな。それに、テーブルとかもあるしさ……毛布もあるみたいだし。暖炉はあるんだけど、薪が無いんじゃ意味ねぇじゃん。ま、いいや……とりあえず、吹雪が止むまではここに留まってる方が安全みたいだしさ」  望はそう言うと、近くにあった椅子へと腰を下ろした。 「裕実、お前も体を休ませておいた方がいいと思うぞ」 「はい! 分かりました!」  裕実はそう元気よく返事をすると、望が座っているテーブルの前へと腰を下ろした。  だが、こんな寒い中で暖炉はあるが、薪が無いのでは使えないのでじっとしているには寒すぎる。むしろ体を動かした方がいいのではないかと思うくらいだ。だんだんと足先から冷えてくるのがわかる。  このままでは凍死してしまうのではないかと思うほどになってきた。  裕実はもう完全に寒いのだろう。体を震わせ、唇まで青くしているのだから。 「裕実……大丈夫か?」 「は、はい……大丈夫ですよ」  そう言って裕実は望に向かって笑顔を見せるのだが、やはり望に心配をかけないようにと笑顔を向けたのだろう。しかし、望からしてみたら、裕実の方は本当にヤバそうな表情をしていた。

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