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ー雪山ー186

 望はとりあえず部屋の中を歩き始める。  暖炉があるのだから、どこかしらに薪などがあると思ったからかもしれない。  裕実の方は寒がりなのか、もう動けなさそうだったのだが、望の方は動けるようで、その足で山小屋の外へと向かうと、裏手にある倉庫の中に薪が置いてあった。そこにはマッチも置いてあり、それを手にすると、望は裕実が待つ山小屋の方へと戻った。 「これで、体を暖めることができるよな?」 「そ、そうですね」  そうは言うものの、裕実の方は未だに体を震わせている。 「とりあえずさ、暖炉の前に来いよ。もし寒くて来れないようなら、火を点けた後に暖炉の前まで連れて行ってやるしさ」 「流石に大丈夫ですよ……そこまでは自力で行けますからね」 「ああ、おう……分かった……とりあえず、無理しないようにな」  望はそう言いながら薪を組み上げて、暖炉に火をつける。  これで多少は暖まるだろう。それと同時に、裕実が暖炉の傍まで来る。 「これで、少しは暖まってきただろ?」 「はい! 良かったですよ……薪があったみたいでね。ですが、和也さんと雄介さんの方は大丈夫でしょうか?」  裕実は少し体を暖めることができて、気持ち的には元気が出てきたのか、喋れるまで回復できたらしい。そこにホッとする望。 「大丈夫なんじゃないかな?」  そう言いながら、望はウェアの内ポケットに入れておいた携帯を取り出してみるが、思った通り、山小屋は見事に圏外だったようだ。  ため息を漏らす望。 「やっぱり、連絡も取れないかぁ。もう、後は助けを待つしかないのかな? それと、まずは雪が止んでくれないと動けないって感じだしよ」

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