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ー雪山ー190

「少し、我慢しててくれねぇかな? 多少痛みを和らげるようにしてやるからさ」 「ああ……。望になら任せられるわぁ……ほな、宜しく……くっ!」  雄介は痛みで顔を歪めながらも、望の方に笑顔を向け、望に身を任せたようだ。 「望ー! 添え木見つけて来たぜ!」 「おっ! サンキュー!」  望は和也から添え木を受け取ると、さっき和也から借りたTシャツを破り、雄介の骨折した箇所に巻いていく。 「とりあえず、雄介の方はこれでいいんだけど……後は天候次第ってところか?」  望はそう言いながら窓の外へと視線を向ける。すると、もう外は暗くなってきており、完全に外の世界は暗闇に包まれていた。 「この分じゃ、明日も危ういよな?」 「まぁ、幸い、出血が少なくて良かったけどな。もし、出血が酷かったら、雄介が明日まで持つかどうかだったからな……そういう意味では、時間の猶予があるって感じだったしな」 「そうだな」  和也は雄介の近くに腰を落とすと、 「雄介? 大丈夫か? 痛みはまだあるのか?」  と、いつも病院で働いている時のように、和也は雄介に声を掛ける。いや、病院で働いている以上の言葉なのかもしれない。和也からすれば、雄介は友達なのだから、そりゃ患者さん以上に心配になるのも当然だ。 「まぁ、と、とりあえずは大丈夫やねんけど、動かすとってところなんかな? ホンマ、動かすだけで……ちょ、痛い……って……」 「当たり前だ……折ってんだから痛いに決まってるだろ」  望は心配するどころか、いつもの調子で言ってしまっている。  そりゃ、勿論、この三人の中で一番心配しているのは望だろう。でも、だからといって、この状況で望が乱れてしまったらどうしようもないのだから、平常心を保とうと必死なのかもしれない。  和也からしてみれば、もっと雄介のことを心配してもいいんじゃないか、と思うのだが、それが望なりの平常心の保ち方なのかもしれない。

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