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ー雪山ー191

 ここで自分が心を乱せば、雄介が不安になるかもしれない。いや、雄介だけではなく、他の二人にも心配をかけることになるだろう。とりあえず天候が回復するまでここに留まらなければならないのだから、体力も温存しなければいけないのかもしれない。 「まぁ、後はとりあえず水分の確保だな。そこにある桶にきれいな雪を入れてくるな……ほら、食べ物がなくても、水分さえ取っていれば大丈夫だろうし」  和也はそう言うと、桶を持って、まだ吹雪いている外へと向かい雪を入れて戻ってくる。  そうすれば雪は暖炉の火によって溶けて水へと変わっていくのだから。  雪が水になると、和也と裕実と望の三人は手で水を掬い、喉を潤す。雄介には望が手で水を掬って飲ませる。  それから、望と裕実はポケットにしまっておいた飴やチョコを取り出し、 「これで、とりあえず、天候が回復するまで保たせるしかないな」 「へぇー、二人とも、こういうの持ち歩いてたんだ」 「つーか……こういうのって、もしもの時の必需品だろ? 確かに、チョコや飴っていうのはお腹には溜まらないものだけどさ、命を保たせるには大事なもんなんだからな」 「それは流石に知ってるけどさ、まさか、スキー場で遭難するとは思ってなかったからな」  そう言う和也に対して、裕実は、 「和也さん……流石にそれは自分に対して危機管理が無さすぎですよー! 僕も持ち歩いてたんですからね」 「悪かったな。危機管理が無さすぎでさ、寧ろ、今までこんなことになったことがなかったからさ」 「だから、それがダメなんですってばぁ! もしもの時のことを考えてくださいよっ!」  普段は温厚な裕実さえも苛立ってしまっているのか、和也に対して説教のようになっている。 「ま、まぁ、裕実……落ち着けよ。今はそうやって言い合ってる場合じゃないんだからさ」  そう二人の間に入ったのは望だ。 「とりあえず、しばらくの間、食料という食料はこれしかないんだから、大事に食べていかないとだろ? 大人なんだから、少しくらい腹減ったって我慢できるだろうしな。俺たちはあの震災を乗り越えてきたんだから、それくらいは大丈夫だよな?」

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