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ー雪山ー192

「あ、ああ、そうだな……とりあえず、みんなで生きて帰るには今はそうするしかないのかぁ」  和也はそう言うと、床の上に置いてある裕実や望が置いた飴を一つ拾い、口の中へと放り込む。裕実も和也の後に続いて口に入れる。  望も雄介の口に飴を入れてから、自分の口に入れるのだ。 「外はやっぱり変わらないか……むしろ、さっきより酷くなったような気がするんだけどな」 「確かにそうかもな」  三人は再び窓の外に視線を向けていた。  幸い、ここは非常用としての山小屋であるらしい。小屋の中には電気だけは通っていた。しかし、さすがに水道やガスまでは通っていないようだ。  テレビも携帯も圏外。それに、今は食べ物だって飴やチョコといった非常用のものしかない状態だ。  さらに、このままでは睡眠もろくに取れそうにない気がする。もちろん、こんな状況で性欲なんかあるわけがない。  望は一つため息をつくと、 「和也……雄介はどうして怪我なんかしたんだ?」 「それか……まぁ、とりあえず、落ち着いたから話すか?」  和也はひと息つくと、雄介が怪我してしまった経緯を話し始めた。  難しいコースへと来た四人。この時点で、もうすでに周りは吹雪になり始めていた。そこで危険を感じた雄介と和也は先に降りて行ったが、途中で望と裕実が着いて来ないことに気付いた雄介は、一旦、足を止めて和也と会話を始めた。しかし、この吹雪では会話もままならないが、大きな声で話せばどうにか会話はできたようだ。 「どないする? 望達来ぇへんのやけど……?」

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