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ー雪山ー193

「だよな……降りて行って、またリフトでって事にもできなさそうだしな」 「せやろ?」 「ここで望たちのことを待つか? ここから上に上がって行ってみるしかねぇよな?」 「せやったら!?」 「そりゃ、迎えに行く! だよなぁ」 「当たり前やんかー!」 「じゃ、行くぞ!」  和也は雄介にそう言うと、二人はゆっくりと上がり始める。  この時間は本当に人がいない。ましてや、望や裕実が着ているレンタルウェアは分かりやすい色でもあるのだから、上から滑ってくればすぐに分かるだろう。  だが、望たちは十分経っても降りてくる気配がなかった。 「まさか、この吹雪で望たちのこと、見落としたんかな?」 「それはあるのかもな……」  雄介のその言葉に対し、和也も同意見のようだ。 「ほんなら、俺、下の方に行ってみるわぁ」 「あ、ああ……」  雄介は向きを変えると、華麗な滑りで降りて行った。だが、雄介が滑っていった直後だったろうか。雄介の悲鳴というのか、うめき声のような、そんな声が和也の耳に届いたらしい。  和也はその声を聞いて、急いで今声がした方へと降りていく。  ほんの少し滑った所で、雄介が転倒している姿が目に入ってくる。 「雄介! どうした!?」 「ん? 和也か……ただな、足が絡まってもうて、転けただけやって……まぁ、とりあえず、大丈夫やしな」  雄介はそう言いながら和也に向けてピースサインを送るが、雄介の足が不自然に曲がっていることに気付く和也。  通常、スキー板をはめた状態で転倒した際にはスキー板がすぐに外れる仕組みになっているが、どうやら雄介のスキー板は外れなかったらしい。そのせいで雄介は骨を折ってしまったのだろう。 「雄介……ごめん……」  先に和也は雄介に向かって謝ると、雄介の足に触れる。 「痛っ!」 「やっぱりか……」 「やっぱりか……ってなんやねんっ……!」 「雄介! 痛いのは我慢するところじゃねぇの。確かに一般の人だったら、そういう風に怪我しても誤魔化せるのかもしれねぇけど、俺や望の前ではそういうのは誤魔化しが効かねぇんだからな」 「せやけど、そないなこと言うたら、お前、望探しに連れてってくれへんやろ? せやから、今回のことについては黙っておったところやったんやけどな。お前だって、裕実のこと心配やねんやろ? それくらい、俺だって望のこと心配やねんって。とりあえず、俺は自分の足がどうなってもええから、望のこと探しに動くからな」

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